
移動にはいろんな方法がある、飛行機も、鉄道も、バスも、車も自転車も徒歩も。ここ三年ほどいろんな旅をした。たくさん美味しいものをたべて、たくさん美しいものを見た。それらはどれも今の私を作っているけれど、美味しいものや美しいものより、旅の後の生活でふとした時に瞼の裏に浮かぶのは道中の景色だ。飛行機のシェードを細く上げたり下げたりしながら見た燃えるような朝焼け、助手席から見たまっすぐな一本道、寝台特急の大きな車窓に流れていく知らない街、どれも、写真には撮れなかった。覚えていたい、とシャッターを切っているのに脳に焼き付いているのは撮っていない景色ばかり。カメラフォルダを見ると忘れてはいなかったけれど思い出してもいなかった記憶が呼び起こされるから存外うまく記録できているとも言えるのかもしれない。あまりに美味しくて飲み込みたくないからとこっそり反芻するような、脳みその中の旅が好き。そのためにも、できるだけたくさん景色を見たいと思う。
キャンピングカーを借りて4泊4日の旅をした。
とは言っても私は免許を持っていないので助手席で賑やかすか後ろの部屋で寝ているだけだった。もしかしたら私は運転席から見る景色がすごく好きかもしれない、そんな気もするけど、まあ免許を取るまで何もわからない。いい加減早く取りたいと言い始めて2年は経つ。
今回の旅のメンバーは私と彼、よく私達の家に遊びに来る彼の友人二人、道中の敦賀まで友人がもう一人。
夜、借りてきた車に着替えと寝袋、快適に過ごすための枕と毛布を積み込んで出発!いくら旅慣れてる彼らでもキャンピングカーの幅には慣れてないらしく、やんややんやと大変そうだったが私は途中から寝っ転がって快眠していたもので、目が覚めたら小浜の道の駅にいた。キャンピングカーって、シートベルトをしてても横になれちゃうのがとてもいい。
目的地に着く寸前、もしくは着いた瞬間に目が覚めるのはなんでだろう。でも車の中で寝るのはそれ以外にはない気持ちよさがあっていつもそのまま寝ていたかった。子供の頃には家に着く手前でいつもの揺れを感知して目が覚めても寝たふりをしておぶってもらったりそのまま小一時間車の中で寝てたりした。でも彼も”着いた時ってなんか分かるよね”と言ってたので、この到着センサーは私にだけに搭載されてるものではないみたい。

一度起きたもののすぐにまた就寝し、旅日和とは言い難い天気の小浜で朝を迎えた。焼き鯖寿司やコロッケを食べて道の駅を堪能し尽くした直後、旅の第一目標である水饅頭を胃の中へつるりと入れた。店内の池(?)から引き上げてすぐの水饅頭はぷるぷるつやつや、不思議と水の味がした。
小浜を出て車を走らせること30分、敦賀に到着してまたしても飯。回転寿司屋さんに入りあれもこれも食べたい、わあなんだこれ、と自分の胃袋のキャパシティを何も考えずに頼んでしまった、スシローではこんなことしないのに……。だって、生ホタルイカの握りとか、生サクラエビの軍艦とか、4月に北陸に来てしまったからには食べずにここを出られない😭😭しっかり平らげて出ました。

敦賀で一人下ろした後、車内が4人になったキャピングカーは石川県に入り自動車博物館へ。エントランスには瓶コーラ、中に入ると世界中から集められた近代の車が立ち並び、トイレに入ればいろんな国のトイレから好きな便座を選んで用を足すことができる。車に興味を持ったことがなくても(もう少し説明があればなとは思ったものの)見るところには困らなくて、車好きに着いて入っただけのはずが思いの外楽しんでしまった。昔の車ってかわいい、なんでも30年経ったものは目新しいものとして再評価される言うのは確かにそうみたい。風情のないように思える大変に合理的な合成素材のタイルを纏う家々も、もうあと10年後くらいにはかわいい!と再評価されるだろうか。でも私たちの目には目新しくは映らないから、親世代が一周まわったリバイバルファッションを見た時のようにこれが…?と口に出さずにはいれなくなってるのかもしれない。その時代の空気と昔のモノを混ぜることでその時代のかわいいになる訳で、それもまた新しいものとして受け取ることのできる柔らかなあたまの大人でいたいんだけどな、と今の私は思いながら、クラシックカーを眺めた。
今日は金沢で夜を過ごそうと北東へ進む。よく揺れるキャンピングカーだなと酔い止めの飴を口に入れごろごろしていたらいつの間にか寝てしまっていた。最近ハマったJerrys popcorn(チーズ&キャラメル)をドライブのお供に入手し、金沢市街に向かう。

夕ご飯はグリルオーツカのハントンライス。
これは嬉しい味!夜ご飯はこれを食べにこようか、なんて約束していたら一日頑張れちゃうような嬉しい味。並盛りでも軽めの大盛りくらいの量、でも美味しくてスプーンが進む。地味に作るのが難しいベトっとしてなくて具の量もうるさくないケチャップライス、何口目でも飽きないタルタルソース、とろとろの卵、まあなんと完璧なバランス。
ところでハントンライスをわかりやすく説明すると、魚のフライとエビフライが乗ったオムライスといったところ。ハンはハンガリーのハン、トンはフランス語でマグロという意味らしいけどなぜハンガリーなのかは調べても皆あんまりわかってないっぽい話ばかり出てくる。ハンガリーの家庭料理に似たものがある訳でもないらしい。面白過ぎる、ハンガリーに行ったら何か分かったりするかな。
川沿いのいい雰囲気の秋吉へ。よく呑みよく食べる人達の横で私は甘いもので締める。これは個人事業主たちの領収書をめぐった戦いの写真、いい瞬間すぎる。
さてもう私の胃の中は美味しいものでいっぱいいっぱい、今日はおやすみなさい!
